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高松高等裁判所 昭和34年(ネ)87号 判決

控訴人 米山直昭 外一名

被控訴人 高鉾農業協同組合

主文

原判決を取り消す。

本件を徳島地方裁判所に差し戻す。

事実

控訴人ら及びその代理人は、当審口頭弁論期日に出頭しないが、左記の旨、即ち、原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する、との裁判を求める。会社の債務のため控訴人らは保証をしたことはない旨を記載した控訴状及び左記の旨、即ち、控訴人米山直昭及び訴外米山直温は、昭和三三年八月一七日訴外丸果飯田青果株式会社の被控訴人に対する被控訴人主張の債務を同会社と連帯して保証する旨の契約をしたことはない旨を記載した準備書面を提出したので、これらを陳述したものとみなす。

被控訴代理人は、本件控訴は、いずれもこれを棄却する。控訴費用は、控訴人らの負担とする、との判決を求めた。

本訴請求の趣旨及び原因は、原判決事実摘示のとおりであるから、こゝにこれを引用する。

被控訴代理人は、甲第一、二号証を提出した。

理由

記録によると、控訴人らは、原審口頭弁論期日に出頭しなかつたが、控訴人米山直昭は、次の旨、即ち、被控訴人主張の訴外会社の被控訴人に対する債務につき、同控訴人は、保証をしたことはないから、その支払義務はない旨を記載した答弁書と題する書面を、また、控訴人米山楽は、次の旨、即ち、同控訴人は直温のものを一物も相続していない旨を記載した答弁書と題する書面をいずれも原審における最初の口頭弁論期日の前に提出したことが明らかである。

ところで、右各書面には、民事訴訟用印紙法第一〇条所定の印紙の貼用のないことは、右各書面により明らかであるから、右各書面は同法第一一条により無効ではないかとの疑問が生ずるわけである。然し乍ら、右第一〇条及び同法のその他の規定の趣旨からして、答弁書と題する書面でも、一定の申立を記載した部分以外の部分は、印紙の貼用がなくても、それがために無効であるというべきものではないと解するのが相当である。

なお、右各書面には、その形式において、民事訴訟法第二四四条の定めるところに合致しない点もないではないが、これを無効とすべき程度の瑕疵は存しない。

そうすると、原裁判所は、民事訴訟法第一三八条により、右各書面記載の前記各事項を控訴人らにおいてそれぞれ陳述したものとみなした上で、本件の審判をなすべきであつたというべきところ、右各記載事項によると、本件請求原因事実の全部又は一部を争うていることが明らかであるから、原判決が、右陳述の擬制をなさず、控訴人らにおいて本件請求原因事実を自白したものとみなし、そして、本訴請求を認容したことは、右規定に、引いては更に同法第一四〇条の規定に違背し、不当であるというべきである。

よつて、原判決を取り消し、本件を第一審裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり判決する。

(裁判官 山崎寅之助 安芸修 荻田健治郎)

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